2014年4月11日金曜日

魔女っ子速報

サボりがちな本ブログですが、
久々にこれは! という作品に出逢った(正確にはまた北野さんにすすめてもらった)ので
ご紹介したいと思います。

ヤマザキコレ「魔法使いの嫁」です。



おいおいまた魔女っ子ものかよーという感じですが、この作品、実にイイ!

お話はどこかのオークション会場で、一人の少女が競売にかけられる場面から始まります。
昏い眼の貧相な少女に、なぜか次々と高値をつけていく人々。
しかし少女を落札したのは、骨頭を持つ異形の"魔法使い"なのでした。



魔法使いは少女を英国の自宅へと連れ帰り、彼女を手厚く保護します。
そして彼女を"魔法使いの弟子"にすると、そして自分の嫁にすると宣言するのでした。

力を持つ保護者+未熟者の被保護者という関係性は、少女漫画でよく見る構図でもあります。
しかし主人公の少女は、跳ねっかえるでもツンデレるでもひたすら戸惑うでもなく、
これまで知ることのなかった世界の側面を、実に素直に受け入れて吸収していきます。

なので読む側としても、素直に作者の描く魔法と幻想の織りなす世界に
入り込んで酔いしれることができます。この世界観が実に美味でしてね。



魔法と妖精と竜のいる世界ですよ。まるで絵本を覗いているかのよう。
魔法と魔術の区別があったり、竜の生態系を作ったりする理屈くさい部分も、
中二ココロをくすぐりまくりです。

もちろん少女と周囲を取り巻く人々(人外含む)の関係性も見逃せません。

これまであんまり良い境遇下になく、自分を棄てかけていた少女が、
魔法使いを始めとする幻想世界の人々に迎え入れられている様子は
ココロ温まるものがあります。魔法使いも威厳あるかと思えばギャグ顔にもなるし。

ラブ虎眼(コメ)流としては見逃せないラブコメについては若干薄めですが、
前作「ふたりの恋愛書架」で歳の差カップル(こちらは男女逆ですが)を
見事描き切ってくれた作者のことなので、今後に絶大な期待を寄せていきたい。

こんなにページを繰りながら「終わるな、終わるな、ずっと続き読みたい…!」
と思った作品は久しぶりです。残念ながら、当たり前ですが1巻は終わってしまい、
しかも続きが超気になるヒキだったので、一刻も早く続きが読みたい!




「すごく強い魔法使いと、被保護者の少女」ってどこかで似たような
作品があったような……うーんと考えたのですが、出てきたのはこれでした。



うん、なんか違う……
(魔法使いは紳士じゃなくて外道だし)

2014年1月7日火曜日

クレイジー週報

たとえばタランティーノの映画に代表される、軽妙な犯罪映画を面白くしている要素って何だろうと考えてみると、「クレイジーの存在」に行き着くわけですね。

わけですねっていきなり何だよと思われたかもしれませんが、今回はこれです。

デストロ246 / 高橋慶太郎



これがもう本当に面白いというか、読んでいて快感すら覚える始末でして。
前作「ヨルムンガンド」も素晴らしい作品でしたが、本作と読み比べると、ブレーキ踏みながら描いてたんだなと思わざるを得ません。
それくらい読んでいて脳内物質が出る。この快楽の源はなんだろうと考えてみると、あれか、となったわけです。

「レザボア・ドッグス」で踊りながら警官の耳を切り落とすマイケル・マドセンとか。
「パルプ・フィクション」で神の愛をエンエンと説きながら銃をつきつけるサミュエル・L・ジャクソンとか。
要するにああいうのです。クレイジーな人たち。

厄介者、はみだし者と呼ばれる人たち。
四角い穴に丸い杭を打ち込むように、
物事をまるで違う目で見る人たち。
彼らは規則を嫌う。
彼らは現状を肯定しない。

おっとこれはAppleの往年の名作CM「Think Different」の冒頭だった。
つまりそういうことです。

本作「デストロ246」は、メチャクチャ強くて頭のネジが2、3本外れた女子高生たちが殺し合いを繰り広げるという明快かつ爽快なテーマが具現化した存在です。それ以外の事は、割とどうでもいい。詳細な背景とか設定とか、犬にでも食わせてろ。

主人公格の人物たちは全員クレイジーな人たち。
よく言って凶暴か狂犬。
言葉は通じますが常人の理屈が通用しません。
でもメチャクチャ強いので、銃と拳で世の中をまかり通ってしまう。
これが何とも痛快なんだなあ。

この世で一番ワガママになるためには、世界最強になればいいって言ったのは誰でしたっけ。板垣恵介?
現実に側にいられたらたまったもんじゃありませんが、漫画だからいいのです。

作品から「これが描きたかったんだよ! 文句あるか!」という執念めいた匂いさえ漂います。大変結構なことです。それは「巨大ロボットと怪獣が殴りあう」というテーマを描くためだけに背景と舞台を全部作り上げた「パシフィック・リム」にも似て。

未だ単行本3巻。三つ巴の女子高生たちの戦いがどのような形で決着するのかは作者のみぞ知るですが、できれば永遠につづいてほしい。終わるな。

ではまた次回。



前回のエントリーを投げた後、大晦日に友人の北野さんがうちに来ました。
帰りに家の近所まで送っていったのですが、その時の会話。

「ああそうだ、別に今じゃなくてもいいんだけど」
「なに?」
「ウィッチクラフトワークス」
「?」
「魔女っ子漫画」
「ああ!!」
「アニメも始まるぞ」
「なるほどねーありがとう。って本当に今じゃなくてもいいなそれ!」

というわけで、ウィッチクラフトワークスも魔女っ子漫画としてオススメです。