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2007年7月19日木曜日

クレイモア

1~4巻で良くある妖魔バスターものかと思いきや、
5~7巻で「ベルセルク」の女性版だったと姿勢を正し、
8~11巻に至るや否や思わず目を見開いて手に汗握る展開に続きはまだか! と叫びたくなった作品です。

主人公たちがとても敵わない強大な相手と対峙し、先ほどまで隣で闘っていたはずの仲間が為す術もなく一蹴されたとき思わず読み手である自分自身の歯の根が鳴り、身体が震えました。

過去の回想によって、主人公の持つ哀しみと絶望感を読者と共有させる手法に至ったとき、これは「ベルセルク」だ。と思い至ったものの、別種の“怖さ”を感じ、今も作品を追っています。

序盤はややあっさりし過ぎている感もあり物足りませんが、過去の回想を経てから俄然面白くなり始めます。そんなところも「ベルセルク」と似ていますね(ベルセルクは過去編が一番面白いという意見もありましょうが……)。

特に、序盤ただ単ののっぺらぼうでおざなりだった妖魔のデザインが急に迫力を増し、ギーガーのデザインにも似たグロテスクな美しさを感じられるようになったあたりからは、必見と云えるでしょう。
この作者は間違いなく変態です。(「エンジェル伝説」の時から片鱗はあったけど…)

掲載紙である月刊少年ジャンプが休刊になり、週刊少年ジャンプへの移籍が発表され、先日唐突にジャンプの中に登場したものの、再登場はいつになるのでしょうか(月イチ連載なのかな?)。

いずれにせよ佳境に入り始め、加速する物語を留めては欲しくないものです。

2007年6月14日木曜日

修羅の刻

「修羅の門」といえば、格闘漫画史に燦然と輝く名作の一つ。

中学・高校の頃に陸奥圓明流の必殺技を真似しようとして怪我しかけた、また実際怪我した経験を持つ方も多いのではないでしょうか(いねーよというツッコミお待ちしております)。

本編「修羅の門」は、主人公が現代の強敵たちと闘うというストーリーの性質上、どうしても物語が冗長になりがちで、第四部がかなりグダグダ気味になっていたのが残念でした。
(実はまだ終わってないはずなんですけどね)

しかし、作者川原正敏のストーリーテラーとしての真の実力は、外伝である「修羅の刻」に見ることができます。むしろ本編より面白いと思ってらっしゃる向きも多いと思います。

物語は、宮本武蔵や柳生十兵衛、土方歳三といった日本史上のスーパー剣豪たちと、当代の陸奥圓明流継承者が色々あった末に激闘を繰り広げる(もちろん歴史上には残っていない)というもので、バトルシーンのスピード感もさることながら、そこに至るまでの「色々」の部分が実に面白い、所謂「歴史if」ものです。

特に単行本2巻、3巻で語られる『風雲幕末編』の展開はトンデモ歴史ながら実に秀逸。坂本龍馬は実は物凄く強い、ということをこの漫画で知った人々は少なくないはず。

そしてこれまでの陸奥圓明流継承者の鬼神のような強さから一転して「弱虫の陸奥」を描いた4巻『アメリカ西部編』は名作中の名作。読み終わった時には不思議なことに目から汗が流れ出てくるのを止められません。

というか、先日久々に4巻を読み直して、何度も読んでいるはずなのにまた泣いてしまったという経験からこのエントリを書いているのでした。

絵にクセがあることや、コマをやたら横長に割ること、擬音をなぜか噴出しで描くなどクセのある漫画ではあります。

が、本編はともかく「修羅の刻」だけでも読んでみて絶対に損はありません。もしあなたが歴史好きなら尚更です。

PS:Amazonで調べてみてびっくりしました。もう10巻以上出てるんですね……。

修羅の刻(とき)―陸奥円明流外伝 (4)修羅の刻(とき)―陸奥円明流外伝 (4)
川原 正敏

講談社 1992-12
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2007年4月17日火曜日

狂四郎2030

本当は「バンパイア」について書こうと思っていたのだけれど、その前にこの作品を語らないことには始まらないので先に書くことにしました。

徳弘正也といえば、我々の世代にとっては「シェイプアップ乱」であり「ジャングルの王者ターちゃん」の作者として知られています。

すぐに思いつくであろう絵は、「皮」をびろーんと広げる、あの独特の下ネタですよね。笑う笑わない以前に読んでいるこっちが恥かしくなるような下品なギャグ満載の漫画でした。

しかし、登場人物は純粋で(スケベで)、素直で(スケベで)、一本筋の通った魅力的なスケベ…もとい、人間として描かれていたことは間違いありません。

そして、少年誌から青年誌へと活動の場を移した徳弘正也は唐突に異彩を放ち始めます。それがこの「狂四郎2030」です。

舞台は戦争によって荒廃した未来の日本。独裁支配下の日本では男女は隔離され、唯一の楽しみはインターネットを通じての「バーチャルSEX」のみ。

そんな仮想空間で出会い、恋に落ちた狂四郎とユリカ。互いが実在すると知ったことから想いは燃え上がります。男女が隔離された近未来では重罪と知りつつ、狂四郎はユリカに会うべく旅立ち、血みどろの戦いを繰り広げ、ユリカは支配階級・ゲノム党の男たちから幾度も屈辱を味わいながら、孤独な戦いを続けます。

互いに本当の顔も知らない。もしかしたら穢れた自分を拒否されてしまうかも知れない。会うのが怖い! でも会いたい!
大雑把にストーリーを言うなれば、マッドマックス版ロミオとジュリエットなのです。

荒唐無稽なプロットですが、欲望にまみれた人間の描写が実に生々しく凄惨を極めています。
食いたい。生きたい。死にたくない。殺したい。犯したい。支配したい。蹂躙したい。
自らの欲に突き動かされた人間たちに運命を翻弄され、狂四郎とユリカは幾度もすれ違い、読む者はいつしか歯を食いしばって涙しながら、そんな二人を見守ることになります。

徳弘正也は人間の「本能」を描く作家なのだと思います。
少年誌では、それは明るくスケベな少年の本能でしかなかったけれど、青年誌の上では、大人となった人間の本能を余すところなく描いている。

もちろん、下品なギャグは相も変わらずで、凄惨な物語に一抹の涼風(ずいぶん生臭い風だけど)を吹き込んでいるし、何よりも狂四郎とユリカの互いを求める男と女の本能が、物語を正方向に牽引してくれています。

絶望の果てを極めたラストには賛否両論あるようです。
しかし未読の方には是非一読をお勧めしたい。

絵にアレルギーを覚える向きもあるだろうが、読まずには死ねない。珠玉の名作です。

狂四郎2030 1 (1)狂四郎2030 1 (1)
徳弘 正也

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