2007年6月14日木曜日

修羅の刻

「修羅の門」といえば、格闘漫画史に燦然と輝く名作の一つ。

中学・高校の頃に陸奥圓明流の必殺技を真似しようとして怪我しかけた、また実際怪我した経験を持つ方も多いのではないでしょうか(いねーよというツッコミお待ちしております)。

本編「修羅の門」は、主人公が現代の強敵たちと闘うというストーリーの性質上、どうしても物語が冗長になりがちで、第四部がかなりグダグダ気味になっていたのが残念でした。
(実はまだ終わってないはずなんですけどね)

しかし、作者川原正敏のストーリーテラーとしての真の実力は、外伝である「修羅の刻」に見ることができます。むしろ本編より面白いと思ってらっしゃる向きも多いと思います。

物語は、宮本武蔵や柳生十兵衛、土方歳三といった日本史上のスーパー剣豪たちと、当代の陸奥圓明流継承者が色々あった末に激闘を繰り広げる(もちろん歴史上には残っていない)というもので、バトルシーンのスピード感もさることながら、そこに至るまでの「色々」の部分が実に面白い、所謂「歴史if」ものです。

特に単行本2巻、3巻で語られる『風雲幕末編』の展開はトンデモ歴史ながら実に秀逸。坂本龍馬は実は物凄く強い、ということをこの漫画で知った人々は少なくないはず。

そしてこれまでの陸奥圓明流継承者の鬼神のような強さから一転して「弱虫の陸奥」を描いた4巻『アメリカ西部編』は名作中の名作。読み終わった時には不思議なことに目から汗が流れ出てくるのを止められません。

というか、先日久々に4巻を読み直して、何度も読んでいるはずなのにまた泣いてしまったという経験からこのエントリを書いているのでした。

絵にクセがあることや、コマをやたら横長に割ること、擬音をなぜか噴出しで描くなどクセのある漫画ではあります。

が、本編はともかく「修羅の刻」だけでも読んでみて絶対に損はありません。もしあなたが歴史好きなら尚更です。

PS:Amazonで調べてみてびっくりしました。もう10巻以上出てるんですね……。

修羅の刻(とき)―陸奥円明流外伝 (4)修羅の刻(とき)―陸奥円明流外伝 (4)
川原 正敏

講談社 1992-12
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おすすめ平均

2007年6月5日火曜日

アグネス仮面

スピリッツで連載されていたプロレス系バカ漫画。

アメリカでの5年間の武者修行を終えて帰国した主人公だったが、所属団体の大和プロレスは帝日プロレスに潰されていて、看板を取り戻すために帝日に乗り込むものの、社長のマーベラス虎嶋(明らかに猪木がモデル)に返り討ちにあった上に、謎の仮面レスラー「アグネス仮面」として働くことになるハメになるというお話。全八巻。

昭和50年代、プロレスは今ほどビジネスライクではなく、ものすごく大雑把でいい加減だったけど、みんな真剣だし熱かった。

という冒頭のモノローグ通り、どこかズレた登場人物たちとユルいやり取りをしつつ、プロレスに関してだけは主人公も含めて全員すごい情熱を持っている。さらに絵も非常に緻密な劇画調であるにも関わらず、やっていることはギャグ。

そのバカっぽさと熱さのギャップがぐいぐいと読み手を引き付ける、奇妙な魅力を持った作品です。

読み終わった後に、アグネス仮面たちの今後が読めないことが残念で、思いのほかこの作品の登場人物たちを愛してしまっている自分に気づかされたりもしました。

作者ヒラヤツミノルは、現在スピリッツでその独特の文法に磨きをかけた「毎日父さん」という作品を連載中。こちらも非常に面白いのだけれど、その前に「アグネス仮面」をぜひ。さらっと読了できます。