2017年12月26日火曜日

ひっこすことにしました

なんとなくBloggerも飽いてきたので引っ越してはてなブログ使ってみることにしました。

■TAGLOG
http://bttftag.hatenablog.com/

2017年、俺のベストマンガ大賞について(前編)

どんだけ更新してなかったんだって自分でも呆れ返りますが、そろそろ年末なので2017年のベストを決定していきたいと思います。ちなみに「2017年に1巻が発売された漫画作品」を対象としています。

候補作は以下の5作品です。今年は随分豊作でした。

白浜鴎「とんがり帽子のアトリエ」

アメコミのヴァリアントカバー作家としても名高い白浜鴎の筆先から生まれたハイファンタジー。超絶画力なので単行本サイズと言わず「AKIRA」みたいな判型で出てほしいマンガです。今年はまずこの作品が一位で間違いないと思っていたんですが……

大童澄瞳「映像研には手を出すな」

これが来てしまいました。境遇も正確も違う女子三人組がアニメーション作品を作るために奔走する話。何がスゴイって、モノ作りに必要なイマジネーションと労力の両方をマンガの中に説得力のある表現として両立させているところ。現実と空想を自在に行き来する表現が観ていて楽しくてずっと読んでいたくなります。これは強力な対抗馬が出てきちゃったなーと思ったら

山口つばさ「ブルーピリオド」


この作品の連載が始まってしまった。リア充の高校生がこれまで全く触れてこなかった絵画の世界に魅入られて藝大受験を目指すお話。絵画って何なの? 芸術って何なの? についてお説教くさくならず分かりやすく描いているのがスゴい上に、ちゃんとした少年の成長物語にもなっているのがスゴい。単行本が12月に出たのでギリギリのエントリーになりました。で、ほかにも伏兵が居てですね……。


入江亜季「北北西に曇と往け」

完全にノーマークだったこちら。「群青学舎」「乱と灰色の世界」で、俺の中で殿堂入り作家の一人になっている入江亜季の新作です。セリフがなくても人物と風景の佇まいの良さだけで読み続けていたくなります。まだ一巻しかでておらず、話がキナ臭い感じになってきたので先が気になるのもエントリ理由のひとつ。そして最後に。


ユペチカ「サトコとナダ」

この作品を知ったのは、愛聴しているラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」内の特集「秋のタマフル推薦図書特集」における古川耕さんのオススメ。

NYに留学したサウジアラビアの少女ナダと日本人サトコのルームシェア生活を描いた話なんですが、もう目から鱗がポロッポロ落ちましたね。イスラム世界の女性は虐げられてるとか狭い了見の横っ面を叩かれたような衝撃でした。かといってそれほどヘビーな話なわけでもなく、基本的にはコミカルかつお気楽な共同・異文化生活が描き出されるので可愛くも愉快です。ちゃんとストーリーがあって、結末がハッピーエンドで迎えられそうな予感がヒシヒシとしてくるのもいいんだよなー。WEBマンガなのである程度無料でも読めます。一度読んで見ることを強くオススメしたい作品なので各人検索してください。

▼2017年秋、宇多丸たちがいちばん勧めたい本はこれだ!
https://www.tbsradio.jp/203225

作者のインタビューなんかもあります。
▼自分の世界から飛び出すきっかけになれたら――第3回「次にくるマンガ大賞」Webマンガ部門4位!『サトコとナダ』ユペチカさんインタビュー【前編】
https://ddnavi.com/interview/395371/a/



で、肝心の「大賞」なんですが……明日に書きます。



2016年3月10日木曜日

魔法使いの嫁 アニメ化!



自分は美しいものが観たいのだなあ、とPVを見てしみじみ思いました。

2015年1月29日木曜日

2015年ベスト1が、九井諒子の「ダンジョン飯」ですでに決まってしまった件

読みました? ダンジョン飯。



もう最高じゃないですか。2015年ベストですよ。
よほどのことがない限り、これは揺るがないんじゃないかと思っています。
(内心では、動かされることを期待してもいますが)

今回はちょっと長くなりますが、本作品の魅力について
好きに語らせていただきたいと思います。

最終的な結論は一番上の四行なので、下は蛇足です。
バジリスクの頭です。



九井諒子のこれまでの作品を読んできて、
すごくすごーくうまいなーと思ってしまったのは、リアリティラインの引き方です。
リアリティラインというのは、要するに「ウソくささ」と言っても良いかも。

このラインコントロールの巧みさに、我々はついつい九井諒子ワールドに
引き寄せられ、取り込まれて魅了されてしまうのです。

もちろん創作物はつくりもの、全部ウソなわけですが、そのへんは見る側・読む側も
織り込み済みで、さあこの作品はどうやって僕らをだましてくれるんだろう? と
ワクワクしながら望むわけですよ。で、期待通りだったりそうじゃなかったりすると。



本作はタイトルからして「ダンジョン飯」。出オチ感が半端ない。
ふんふんなるほどね。ダンジョンでモンスターを飯にするグルメマンガかな?
なんていう期待に胸を膨らませて本を開いてみるわけです。




すると、いきなりダンジョンに挑戦中のパーティがドラゴンにやられて全滅。
ドラゴンに食べられてしまったらしい主人公の妹を除いて、全員一文無しで
ダンジョンの外に放り出されるところから始まります。

助かってしまった主人公は、妹を助けに(蘇生させに)行きたい。
わかりやすい動機付けが読者に提示されます。

さらにここで、ファンタジー作品等に慣れ親しんでいる読者なら、
なるほど魔法あり・蘇生ありの世界観なんだなと理解できます。
(しかもウンコから蘇生とか言ってるので、わりとゆるいノリだなということも分かります)

でもその後、主人公は自分たちに何も残されていないことに気づきます。



装備なし・金なし・食料なしの八方ふさがり。メシを食わなきゃ
人は生きていけない。このあたりでリアリティの壁が見え隠れし始めます。

そして主人公は一大決心。



倒したモンスターを調理して食いながらダンジョンの最奥部を目指そう!
などと言い出します。当然、パーティの仲間は大反対。



反対をおしてそのあとすぐ、オオサソリを倒して強引に煮て食ってみようとする
主人公でしたがゲキマズでゲロゲロ状態に……


しかしその後、どこからともなく現れたドワーフ族の男が、
オオサソリの正しい調理法を主人公たちの前で披露し、
あっというまにモンスターをおいしい鍋に変えてしまいます。

恐る恐る仲間もこれに口をつけ、意外な美味に驚きますが、
心理的な抵抗は消えず……

これです。これが実にうまい!
いやオオサソリは、ただ煮て食ったらまずいんでしょうけど。
(それにしてもこのエルフ娘のリアクションはいちいちかわいい)

「モンスターを調理して食うこと」自体は、このゆるいファンタジー世界の中にあっても
異端であり異常な行為であると仲間の反応を通して語っているわけです。

この対立構図がないと、たんなるゲテモノ食いバスターズになってしまいます。
だからこそ、目次という名のお品書きの最後にある「動く鎧」という項目に、
えっそれ食べるの、どうやって!? と心惹かれることになるのではないでしょうか。
(解決法は見事なものです。あとは読んでのお楽しみ)



またこの作者ならではといえるディティールの細かさが、世界に深みを与えてくれて、
「この世界のリアル」が読む側の脳内でどんどん積み上がっていきます。

ダンジョンが存在する理由も何かあるようですし、モンスターにはそれぞれ生態がある。
そしてこれらを「正しく調理」してこそ、初めて人が食べ得るものになる。
現実でも同じですよね。じゃがいも一つとっても、ちゃんと調理しないと単なる毒です。

本作品に欠点があるとしたら、まだ2巻が出ていないということでしょうか。
1巻を読み終わったら、この面白く魅力的な世界観から脱却しなければならないのです。
そんな、耐えられない! 早く2巻を、2巻を食べさせてくれえ!

といったところで、本日はこのへんで。
長文失礼いたしました。




ちなみに2015年のベスト1が「ダンジョン飯」なら2014年のベストは何なんだ、と問われれば
やはり「魔法使いの嫁」と応えるでしょう。

どうもファンタジーものに弱いのかな。

2014年4月11日金曜日

魔女っ子速報

サボりがちな本ブログですが、
久々にこれは! という作品に出逢った(正確にはまた北野さんにすすめてもらった)ので
ご紹介したいと思います。

ヤマザキコレ「魔法使いの嫁」です。



おいおいまた魔女っ子ものかよーという感じですが、この作品、実にイイ!

お話はどこかのオークション会場で、一人の少女が競売にかけられる場面から始まります。
昏い眼の貧相な少女に、なぜか次々と高値をつけていく人々。
しかし少女を落札したのは、骨頭を持つ異形の"魔法使い"なのでした。



魔法使いは少女を英国の自宅へと連れ帰り、彼女を手厚く保護します。
そして彼女を"魔法使いの弟子"にすると、そして自分の嫁にすると宣言するのでした。

力を持つ保護者+未熟者の被保護者という関係性は、少女漫画でよく見る構図でもあります。
しかし主人公の少女は、跳ねっかえるでもツンデレるでもひたすら戸惑うでもなく、
これまで知ることのなかった世界の側面を、実に素直に受け入れて吸収していきます。

なので読む側としても、素直に作者の描く魔法と幻想の織りなす世界に
入り込んで酔いしれることができます。この世界観が実に美味でしてね。



魔法と妖精と竜のいる世界ですよ。まるで絵本を覗いているかのよう。
魔法と魔術の区別があったり、竜の生態系を作ったりする理屈くさい部分も、
中二ココロをくすぐりまくりです。

もちろん少女と周囲を取り巻く人々(人外含む)の関係性も見逃せません。

これまであんまり良い境遇下になく、自分を棄てかけていた少女が、
魔法使いを始めとする幻想世界の人々に迎え入れられている様子は
ココロ温まるものがあります。魔法使いも威厳あるかと思えばギャグ顔にもなるし。

ラブ虎眼(コメ)流としては見逃せないラブコメについては若干薄めですが、
前作「ふたりの恋愛書架」で歳の差カップル(こちらは男女逆ですが)を
見事描き切ってくれた作者のことなので、今後に絶大な期待を寄せていきたい。

こんなにページを繰りながら「終わるな、終わるな、ずっと続き読みたい…!」
と思った作品は久しぶりです。残念ながら、当たり前ですが1巻は終わってしまい、
しかも続きが超気になるヒキだったので、一刻も早く続きが読みたい!




「すごく強い魔法使いと、被保護者の少女」ってどこかで似たような
作品があったような……うーんと考えたのですが、出てきたのはこれでした。



うん、なんか違う……
(魔法使いは紳士じゃなくて外道だし)

2014年1月7日火曜日

クレイジー週報

たとえばタランティーノの映画に代表される、軽妙な犯罪映画を面白くしている要素って何だろうと考えてみると、「クレイジーの存在」に行き着くわけですね。

わけですねっていきなり何だよと思われたかもしれませんが、今回はこれです。

デストロ246 / 高橋慶太郎



これがもう本当に面白いというか、読んでいて快感すら覚える始末でして。
前作「ヨルムンガンド」も素晴らしい作品でしたが、本作と読み比べると、ブレーキ踏みながら描いてたんだなと思わざるを得ません。
それくらい読んでいて脳内物質が出る。この快楽の源はなんだろうと考えてみると、あれか、となったわけです。

「レザボア・ドッグス」で踊りながら警官の耳を切り落とすマイケル・マドセンとか。
「パルプ・フィクション」で神の愛をエンエンと説きながら銃をつきつけるサミュエル・L・ジャクソンとか。
要するにああいうのです。クレイジーな人たち。

厄介者、はみだし者と呼ばれる人たち。
四角い穴に丸い杭を打ち込むように、
物事をまるで違う目で見る人たち。
彼らは規則を嫌う。
彼らは現状を肯定しない。

おっとこれはAppleの往年の名作CM「Think Different」の冒頭だった。
つまりそういうことです。

本作「デストロ246」は、メチャクチャ強くて頭のネジが2、3本外れた女子高生たちが殺し合いを繰り広げるという明快かつ爽快なテーマが具現化した存在です。それ以外の事は、割とどうでもいい。詳細な背景とか設定とか、犬にでも食わせてろ。

主人公格の人物たちは全員クレイジーな人たち。
よく言って凶暴か狂犬。
言葉は通じますが常人の理屈が通用しません。
でもメチャクチャ強いので、銃と拳で世の中をまかり通ってしまう。
これが何とも痛快なんだなあ。

この世で一番ワガママになるためには、世界最強になればいいって言ったのは誰でしたっけ。板垣恵介?
現実に側にいられたらたまったもんじゃありませんが、漫画だからいいのです。

作品から「これが描きたかったんだよ! 文句あるか!」という執念めいた匂いさえ漂います。大変結構なことです。それは「巨大ロボットと怪獣が殴りあう」というテーマを描くためだけに背景と舞台を全部作り上げた「パシフィック・リム」にも似て。

未だ単行本3巻。三つ巴の女子高生たちの戦いがどのような形で決着するのかは作者のみぞ知るですが、できれば永遠につづいてほしい。終わるな。

ではまた次回。



前回のエントリーを投げた後、大晦日に友人の北野さんがうちに来ました。
帰りに家の近所まで送っていったのですが、その時の会話。

「ああそうだ、別に今じゃなくてもいいんだけど」
「なに?」
「ウィッチクラフトワークス」
「?」
「魔女っ子漫画」
「ああ!!」
「アニメも始まるぞ」
「なるほどねーありがとう。って本当に今じゃなくてもいいなそれ!」

というわけで、ウィッチクラフトワークスも魔女っ子漫画としてオススメです。

2013年12月30日月曜日

魔女っ子週報

企画ものばっかりでもアレなので、最近読んだ漫画のことなど。

ふらいんぐうぃっち / 石塚千尋



「別冊少年マガジン」からの出物が最近増えましたね。友人の北野さんに勧められて読んだのですが、いやあこれがなかなか面白い。

魔女っ子の主人公が東北の片田舎に引っ越してくるという、ちょっと「魔女の宅急便」を彷彿とさせるような設定ながら、別段パン屋の片隅に住むわけでも仕事をするわけでもなく、女子高生として何の変哲もない……ように見えるけど、実際はけっこうヘンテコな日常に周囲を巻き込む、というお話です。

主人公がやや天然で、登場人物たちのボケとツッコミのやりとりを始め、作風ものんびりしているというか、日常の「間」を大切にしている風ではあります。しかし、時折飛び出す魔女っぽい個性とか、訪れる奇妙な客人たちが良いアクセントになっていて、これからどうなるのかしらねーと淡い期待を抱かせてくれます。ラブコメとかは、たぶんしなそう……

「日常ものを装っている作品は、実際にはものすごい非日常を扱っている」というのは「日常もの」のお約束です。「何も起きない系」なんて言われたりしますが、それは「何か起きる要素がありったけ詰まっているのに、何も起きない」からこそ、外しの絶妙さ加減が面白いわけで。この作品もそんな風になっていけば良いなあと、今後に期待しています。

ちなみに講談社のWEBで第一話を読むことができますので、気になる方はどうぞ。

別冊少年マガジンWEB ふらいんぐうぃっち



それにしても、

これとか
これとか


あ、これもそうか。









魔法少女ではなく、魔女っ子ものって、今トレンドなんでしょうかね。

……と考えてみたけど、いくら考えても上記以外の作品が思いつかなかったので、全然そんなことはなかったぜ。

では次回。